公文書部分不開示決定処分取消等請求事件(土地賃貸借契約)

令和2年(行ウ)第15号 公文書部分不開示決定処分取消等請求事件(第1審)

原告:個人(市民1名)

被告:御前崎市長

 

管轄:静岡地方裁判所

訴訟の提起

原告は、被告が令和2年3月26日付けで決定した公文書開示請求に対する部分開示決定処分について、取り消すことを(不開示部分の開示)求めるとともに、同処分により精神的苦痛を被ったとして慰謝料20万円の支払いを求めて、令和2年6月29日付けで静岡地方裁判所に訴状を提出した。なお、処分の取り消し請求については、被告が不開示部分を開示したことにより取下げられた。

事件の概要

原告は、被告宛に令和2年3月13日付けで公文書開示請求を行った。請求した公文書は、池新田財産区(管理者)と民間事業者が契約した土地賃貸借契約書である。これに対して、被告は、令和2年3月26日付けで公文書部分開示決定(一部不開示)を原告に通知した。

部分開示決定処分の理由

御前崎市情報公開条例第6条(3)アを理由として部分開示決定の処分とした。

条例文:法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報を除く。

ア 開示することにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの

市(被告)の主張

財産区の公文書は、財政課で保有している場合、御前崎市情報公開条例が適用される。本件については、条例第6条(3)アにより契約当事者の「印影」「契約期間」「賃貸料」を不開示とし、部分開示決定を行った。これらの情報を不開示としたことは、契約相手方の経営、財政状況に関する影響を配慮したものである。これは正当な不開示情報として、公文書部分開示決定は適法であり、原告の請求の棄却を求める。

訴訟の経過

令和2年6月29日(月曜日)   提訴

令和2年9月10日(木曜日)  第1回期日_口頭弁論

令和2年10月20日(火曜日) 第2回期日_弁論準備手続

令和2年11月26日(木曜日) 第3回期日_弁論準備手続

令和3年1月19日(火曜日)  第4回期日_弁論準備手続

令和3年3月4日(木曜日)    第5回期日_弁論準備手続

令和3年5月13日(木曜日)  第6回期日_弁論準備手続

令和3年6月29日(火曜日)  第7回期日_弁論準備手続

令和3年8月17日(火曜日)  第8回期日_弁論準備手続

令和3年9月28日(火曜日)  第9回期日_弁論準備手続

令和3年11月9日(火曜日)   第10回期日_口頭弁論(結審)

令和4年2月24日(木曜日) 判決言渡し

判決主文

1.原告の請求を棄却する。

2.訴訟費用は原告の負担とする。

裁判所の判断(判決抜粋)

 本件の損害賠償請求は、本件部分不開示決定のうち本件賃貸借契約書の契約期間及び賃貸料金を不開示とする部分の取消請求と併合して訴訟提起されたものであるが、このうち同取消請求については、令和3年8月17日実施の弁論準備手続期日において、原告がこれを取り下げ、被告もこれに同意したことにより終了している。
 原告は、本件部分不開示決定をした被告の行為は、公務員の職務上の注意義務に反するものであって、国家賠償法上違法であると主張するが、御前崎市長が本件部分不開示決定を行うに当たり、公開条例6条3号アに規定する不開示情報の認定、判断をする上においては、必要な調査を実施していたというべきであり、少なくとも、被告が、故意又は過失により職務上の注意義務を尽くさなかったと認めることはできず、原告の主張を採用することはできない。
 原告は、御前崎市長が本件賃貸借契約書の内容につき、これを故意に隠蔽する目的で本件部分不開示決定を行ったなどと主張するが、しかしながら原告の主張を裏付けるような具体的な事情を認めるに足りる証拠はないものといわざるを得ず、原告の主張を採用することはできない。
 なお、原告は、御前崎市長が行った本件部分不開示決定は、憲法1条及び憲法94条に反して違憲であるとも主張するが、必ずしも合理的根拠に基づく主張とはいえず、採用することはできない。
 以上によると、御前崎市長による本件部分不開示決定を国家賠償法上違法と評価することはできない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がない。
 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

令和4年(行コ)第93号 公文書部分不開示決定処分取消等請求控訴事件(第2審)

原告:個人(市民1名)

被告:御前崎市長

 

管轄:東京高等裁判所

控訴の理由

原判決は法解釈を誤ったものであり、破棄を免れない。

訴訟の経過

令和4年3月8日(火曜日)   原告控訴

令和4年8月8日(月曜日)   第1回期日_口頭弁論(結審)

令和4年9月21日(水曜日)  判決言渡し

判決主文

1.本件控訴を棄却する。

2.控訴費用は控訴人の負担とする。

裁判所の判断(判決抜粋)

当裁判所も控訴人の請求は理由がなく、棄却するものであると判断する。

1.控訴人は、主権者である住民は、住民の財産の処理内容である本件賃貸借契約について、賃貸料金等を知る権利があるにもかかわらずこれらを隠蔽する部分不開示決定は憲法94条、21条1項に反するものである旨を主張する。しかしながら、公開条例が主権者である住民(市民)の知る権利を保障するとともに、地方自治の本旨に即した公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的として制定されたものであること(公開条例1条)を考慮しても、実施機関の保有する全ての公文書が無条件、無限定に開示の対象になるものと解することはできない。本件において、契約期間及び賃貸料金を開示することにより賃借人の競争上の地位等を害するおそれがあり、実施機関(御前崎市長)が開示しなかったからといって、憲法94条、21条1項に反するものであるとか、国家賠償法1条1項の適用上違法であると認めることはできないから、控訴人の主張は採用することができない。

2.本件賃貸借契約は、本件各土地を処分するのではなく、本件各土地を適正な対価なく貸し付けるものであると直ちに認められるものでもないから、控訴人が指摘する地方自治法96条1項6号、8号及び御前崎市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例3条の規定により御前崎市議会の議決を要するものとは解されない。

よって、控訴人の請求は理由がないから、これを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

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更新日:2023年01月20日