公文書不開示決定処分取消等請求事件(財産区管理会保有公文書)
令和3年(行ウ)第8号 公文書不開示決定処分取消等請求事件(第1審)
原告:個人(弁護士)
被告:御前崎市長
訴訟の提起
原告は、2019年11月以来御前崎市池新田財産区への産廃業者進出反対に関わる訴訟・住民監査請求・公文書開示請求等における住民の代理人として活動してきた弁護士であり、当然に御前崎市池新田財産区管理会の抗議文等の開示を求める権利を有するところ、被告は開示すると財産区管理会にとって都合の悪い真実が明らかとなり、追及・批判を受けることが必至であるため、本件文書を隠蔽したとして、被告が令和3年2月12日付けで決定した公文書開示請求に対する不開示決定処分について、決定を取り消すこと及び損害賠償として慰謝料10万円等の支払を求めて、令和3年4月12日付けで静岡地方裁判所に訴状を提出した。
事件の概要
原告は、被告宛に令和3年2月8日付けで公文書開示請求を郵送で行った。請求した公文書は、池新田財産区管理会が、平成30年11月から12月にかけて某出版社に対して送付した文書並びに某出版社から受領した文書である。これに対して、被告は、市とは別の特別地方公共団体である池新田財産区管理会が発出及び受領した文書であり、該当する文書を市では保有していないため、令和3年2月12日付けで公文書不開示決定を原告宛に通知した。
(開示しない理由:開示請求に係る公文書を保有していないため)
市(被告)の主張
本件に該当する公文書は、御前崎市情報公開条例第2条(1)の実施機関に記載されていない「財産区」(財産区管理会)が送付及び受領した公文書である。
「財産区」は、地方自治法で定められた特別地方公共団体であり、法人格を有している。普通地方公共団体の長である被告とは別の特別地方公共団体であり、被告が開示しうる公文書の範囲ではない。また、該当する公文書は、市では保有しておらず開示することができないため、公文書不開示決定は適法であり、原告の請求の棄却を求める。
訴訟の経過
令和3年4月12日(月曜日) 提訴
令和3年7月15日(木曜日) 第1回期日_口頭弁論
令和3年9月9日(木曜日) 第2回期日_弁論準備手続
令和3年10月21日(木曜日) 第3回期日_口頭弁論(結審)
令和4年2月10日(木曜日) 判決言渡し
判決主文
1.原告の請求をいずれも棄却する。
2.訴訟費用は原告の負担とする。
裁判所の判断(判決抜粋)
原告は、御前崎市長が本件文書を保有していないことを理由とする本件処分の違法を主張しているが、公開条例において、「公文書」とは実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書等であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして「保有」しているものをいうと定義している。
財産区管理会は、執行機関としての市区町村長の一部と評価することはできず、市区町村長の参与機関的性格及び財産区の執行機関的性格を有する別個の機関と解されることから、池新田財産区が本件文書を作成又は取得していたとしても、そのことによって直ちに、本件処分である公文書不開示決定の時点において、実施機関である御前崎市長が本件文書を「保有」していたと認めることはできないのであって、その他、御前崎市長が本件文書を「保有」していたと認めるに足りる証拠はないから、原告の主張はいずれも採用することはできない。
したがって、本件文書を保有していないことを理由とする本件処分は適法というべきであるから、原告の本件処分の取消請求は理由がない。
以上のとおり、本件文書を保有していないことを理由とする本件処分は適法であるから、御前崎市長が行った本件処分について、国家賠償法上違法となる余地はない。
したがって、原告の国家賠償請求は理由がない。
よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
令和4年(行コ)第80号 公文書不開示決定処分取消等請求控訴事件(第2審)
控訴人:個人(他市民1名)
被控訴人:御前崎市長
管轄:東京高等裁判所
控訴の理由(理由書抜粋)
原判決は法の解釈を誤り、財産区を異別の地方公共団体視している感じが強いので是正されなければならない。是正される場合、被控訴人は管理会作成の議事録を追認して来たのであるから、管理会作成の議事録は市(財政課)が作成したものと見なすことができる。とすると、市(財政課)に当該文書が存在しないという理由を以って不開示決定するのは非合理である。よって、一審判決は破棄を免れない。
訴訟の経過
令和4年2月25日(金曜日) 原告控訴
令和4年6月29日(水曜日) 第1回期日_口頭弁論(結審)
令和4年8月31日(水曜日) 判決言渡し
判決主文
1.本件控訴を棄却する。
2.控訴費用は控訴人の負担とする。
裁判所の判断(判決抜粋)
財産区管理会の運営については、会長が管理会の会議を主宰し、管理会に関する事務を処理することのほか、管理会の招集・定足数・議事手続などが管理会条例に定められており、これらは財産区管理会の固有の事務であるといえることから、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
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更新日:2023年01月20日